傘恋愛 -カ サ レ ン ア イ-
口の手拭いを解いてユイを抱き締めた。
「来ちゃ駄目、来ちゃ駄目だよ奏・・・!」
「何言ってんだよ!」
「なんで・・・」
「おい、騒がしいぞ」
「!」
「誰だあんた、人の家で何してるんだ!」
腕の中のユイの身体が、尋常じゃなく震え出したのが分かった。
「あんたか・・・」
ドアの前で、明らかに動揺したように俺を見る男を、ギッと睨んだ。
「ふ、不法侵入で訴えるぞ」
「・・・不法侵入?監禁、虐待の方が罪は重い」
何も聞こえないように、ユイの耳を塞いだ。
「消えろ。あんたが誰かは分からないけど、一生こいつの前に現れんじゃねぇ。」
「はあ?何言ってるここは私の「良いからさっさと消えろよ!!」」
「・・・け、警察呼ぶぞ!」
脅したつもりなのか、そう言った男を俺は睨んで続けた。
「それが出来ないなら俺はあんたを訴える。警察を呼ぶのは勝手だが、それは自首ととった方がいいな。」
すると男は何か言いたそうだったが、ドタドタと家を出た。
まぁ、確かに俺の家じゃあ無いのだけど。
「ユイ・・・大丈夫か?あいつなら居なくなったよ」
まだ小刻みに震えるユイをもう一度ギュッと抱き締めてそう言う。
「・・・っ」
「大丈夫だから、もう」
ユイは俺の服の袖を握り締めながら、黙って俯いていた。
「・・・遅くなって、ごめん」
「・・・遅過ぎる、よ」
小さく、枯れそうな声でそう言ったユイは・・・泣いてたのかもしれない。