傘恋愛 -カ サ レ ン ア イ-
「ん」
まだ温かいホットミルクをユイの前のテーブルに置いて、斜め右の位置に座る。
ふう、と溜め息をついてから俺は自分のブラックのコーヒーを口にする。
沈黙が流れた。
すると、さっきまで俯いてたユイが、ホットミルクを一口飲んで俺の方を見た。
「何から話せばいい?」
そう言って、笑った。
「・・・あの男は誰だ?」
ユイの苦しそうな笑顔には敢えて触れず、俺はそう続けた。
「ああ、あの人・・・義父だよ」
「・・・そうか」
「それだけじゃ無いでしょ?」
「え?」
「もっと聞くこと在るんでしょ?本当の親はどうしたとか、何でずっと会いに行かなかったのかとか・・・っ、何で、そんなに優しくすんの・・・」
初めて見たユイの表情に、少しだけ戸惑った。
「ユイ、落ち着けよ」
「落ち着いてるよ」
「・・・・」
ユイは俺から視線を逸らすと、向こう側を向いて体育座りをした。