傘恋愛 -カ サ レ ン ア イ-
裏口の側のネットにゴミを捨てると、赤い傘を差してこの間の所へ向かう。
本当は自分の傘を持って来る所だが、不覚にもそのことをちっとも考えて居なかったのだ。
少し小走りでその場所まで行くと、人影が見える。
彼女だ。
まるで分かっていたかの様に、俺を振り向いて笑う。
少し遅れて彼女が傘も差さずびしょ濡れなことに気付いて、俺は慌てて駆け寄って彼女に傘を差した。
「来たんだね」
彼女が俺を見上げる。
「変なメッセージ残すからだ、これも借りたまんまだし」
俺がそう言うと、彼女は「そっか」と言った。
「「・・・・」」
彼女の髪から滴り落ちる水滴を見て、何を思ったのか俺は自分の上着を彼女の肩にかけた。
「俺、そこの喫茶店で働いてるんだ」
彼女はきょとんとした目で、何を言ってるのかと俺を見る。
「その・・・あれだ。来るか?」
俺の突然の申し出に、彼女は暫く考えてから、こくりと頷いた。