傘恋愛 -カ サ レ ン ア イ-
「じゃ、ごゆっくり」
出来たてのブラックのコーヒーを俺の前に置いてから、そうニコリと笑ってマスターはホールに居る客と話に行く。
俺はコーヒーを一口飲んでから、隣に居るユイをちらりと見た。
「なに?」
お見通し、と言わんばかりにユイが俺を見る。
「あんた、いくつ?」
他に思い浮かぶ事が無くて、俺は咄嗟にそう言った。
ユイは少し考えてから、小さく笑った。
「女の人に年聞くなんて、失礼だね」
「生憎俺はそこまで人に気を使える男じゃ無い」
俺がそう言うと、何が可笑しいのかユイは堪える様に笑う。
「なんだよ」
「別に」
「笑ってんじゃねぇか」
「だって」とユイは笑いながら俺を見る。
ユイが涙を堪えながら笑うから、俺もつられて笑ってしまったんだ。