傘恋愛 -カ サ レ ン ア イ-
準備中、の看板がかかった扉を開けて、喫茶店に入る。
「お、奏汰奏汰!良い所に来た、ちょっとこっち来てくれ!」
店に入った瞬間、厨房から首だけを覗かせたマスターが俺を呼ぶ。
もしこれが俺じゃ無かったら、完全に怪しい人だ。
「なんですか?」
鞄だけ置いて、厨房に向かう。
「新作メニュー」
「新作?」
「どうよ、まぁ食べてみて」
そう言ってマスターが差し出したのは、ブルーベリーのソースがかかったチーズケーキ。
一見何処にでも在るようだけど、俺は黙って口に運ぶ。
「・・・うま」
「だろ?ほら、うちってスイーツに欠けてるから。今日からこれ出してみようと思うんだけど、どう思う」
「いや、全然良いと思います」
マスターはそっかそっか、と喜んだ様に笑って、食器を洗いに戻った。
甘過ぎず、かつ濃厚過ぎない、ブルーベリーのソースが良く合って居た。
これなら、ユイも食べれるかな。
俺は小さく笑って、制服に着替えに控え室へ向かった。