傘恋愛 -カ サ レ ン ア イ-
新作チーズケーキは好評だった。
油をあまり使ってないからヘルシーだし、ポイントのブルーベリーソースがOLには堪らなかった様だ。
「おい奏汰、これ4番!」
「あ、はい」
いつもじゃ穏やかに流れる店内が、今日は少しだけ忙しそうに動いて居た。
それもそうだ、人出が足りな過ぎる。
マスターは近々新しいバイトくんを探すと言って居たが、あんまり沢山の人を雇いたくは無い様だった。
それは金銭の問題じゃなく、お客との信頼関係もあって。
「あの、すみません」
「はい?」
会計をしていたOLが突然そう言った。
何か不手際があったのかとレシートと注文票を確認してると、彼女は慌てたように、
「あの、違うんです、チーズケーキ、凄い美味しかったから」
「ああ、有難うございます」
「また来ますね、お友達も連れて」
「お待ちしてます」
小さく笑ってそう言うと、彼女は満足そうに微笑んで店を出た。
マスターは、こう言う小さなやりとりの事を言ってるんだろう。
俺も、自分が作った訳でも無いのに心が温かくなる。
だからこの場所が、好きなんだと思う。