傘恋愛 -カ サ レ ン ア イ-
数日か経って雨が降った日、あたしは再びあの場所へ向かった。
来るかな、あの人は。
雨に打たれてただこの間と同じ場所にボーッと立ってると、遠くからパシャパシャと誰かが走って来る音がした。
・・・ビンゴ。
「来たんだね」
あたしが笑うと、彼は少し戸惑ってから、慌てた様にあたしを傘の中に入れた。
暫く沈黙が続いてから、突然彼が自分の上着を脱いであたしの肩にかけて、
「俺、そこの喫茶店で働いてるんだ」
なんて言うから、驚いた。
と言うか、何だいきなり、って感情に近かった。
だけど、少しふてくされた様に「来るか?」って言った彼が可愛くて、あたしは黙って頷いた。
まだ湯気があがるホットミルク。
あたしは猫舌だから、すぐに舌を軽く火傷した。
そんなあたしの姿を見て彼は、
「少し冷ましとけ」
って優しく言うから、心が落ち着いた。
肩にかけられた上着が暖かくて、あたしはぎゅっと上着を握りしめる。
この温もりがずっとあたしの物になれば良いのにと。