傘恋愛 -カ サ レ ン ア イ-
ピピピピピピピッー
相変わらずな電子音が、俺を夢の世界から引き戻す。
毎回解除するのを忘れるんだ。
重い身体を起こすと、カーテンの隙間から眩しいくらいの太陽が覗いていた。
ハッとユイのことを思い出して、慌てて隣の部屋に行く。
「・・・居ない」
ベッドサイドのテーブルに、マグカップだけが残っていた。
何故だ、また「雨」か?
訳の分からないもやもやが頭の中で葛藤しだす。
その時だった。
ガチャンー
「あ、奏起きたんだ?」
笑顔と共にそう声がした。
「ユイ・・・」
「勝手に鍵借りたよ、後お金も。この家食べ物なにも無かったんだもん、よく生きてられたね?」
「ユイっ」
咄嗟にユイを抱きしめていた。
ユイが驚いたように腕の中で固まる、だけど暫くして俺の背中にそっと手を回して来た。
「どしたの」
「消えたかと思った」
「え?」
「今日・・・晴れてるから」
ユイは黙ってた。
それが始めて、晴れた日にユイの姿を見た日だった。