傘恋愛 -カ サ レ ン ア イ-
数日経った晩、夜だけ手伝い程度に俺は喫茶店に向かった。
今日は、ユイのコンサートの日だから。
店にはいつも通りの客と、コンサートを待つ客で賑わって居た。
ベースをやってる知り合いの姿もあった。
だけど肝心の、ユイが居ない。
「あ、奏汰!」
俺がステージを見てると、奥からマスターが慌てた様に出て来た。
「ユイちゃん、知らない?この間は7時には来るって言ってたんだけど・・・なかなか来ないからさ」
そう言われて時計を見ると、もう7時半を回っていた。
あれだけ嬉しそうにしていたんだ、すっぽかすなんてことは先ず無いだろう。
「俺、ちょっと見て来ましょうか」
「おお、頼むわ」
何かあったのかもしれない。
そう思い上着を掴んでドアに向かうと、
カランコロンー
「ユイ・・・!」
「あ・・・ごめん、遅れた」
ユイがびしょ濡れのまま店に入って来た。
「おま、どうしたんだよ!傘は?」
「忘れちゃって」
「・・・・、取り敢えず店の服に着替えろ、タオル持ってくるから」
俺はそう言ってユイを控え室にやった。
・・・見えてしまった。
首の襟の部分からうっすらと、紫に変色した痣が。