傘恋愛 -カ サ レ ン ア イ-






数日経った晩、夜だけ手伝い程度に俺は喫茶店に向かった。




今日は、ユイのコンサートの日だから。



店にはいつも通りの客と、コンサートを待つ客で賑わって居た。

ベースをやってる知り合いの姿もあった。



だけど肝心の、ユイが居ない。



「あ、奏汰!」

俺がステージを見てると、奥からマスターが慌てた様に出て来た。


「ユイちゃん、知らない?この間は7時には来るって言ってたんだけど・・・なかなか来ないからさ」


そう言われて時計を見ると、もう7時半を回っていた。


あれだけ嬉しそうにしていたんだ、すっぽかすなんてことは先ず無いだろう。


「俺、ちょっと見て来ましょうか」

「おお、頼むわ」



何かあったのかもしれない。



そう思い上着を掴んでドアに向かうと、


カランコロンー

「ユイ・・・!」


「あ・・・ごめん、遅れた」


ユイがびしょ濡れのまま店に入って来た。


「おま、どうしたんだよ!傘は?」

「忘れちゃって」


「・・・・、取り敢えず店の服に着替えろ、タオル持ってくるから」



俺はそう言ってユイを控え室にやった。








・・・見えてしまった。


首の襟の部分からうっすらと、紫に変色した痣が。






< 72 / 133 >

この作品をシェア

pagetop