傘恋愛 -カ サ レ ン ア イ-
コンサートは成功した。
いつもの様にピアノを弾くユイの姿に特に変わった様子は無かったし、始終笑顔も観られた。
ただ俺は、さっき見えた首元の痣が頭から離れなかった。
・・・まだ新しかった。
何で、また。
変な思いが俺の中を交差して、正直、演奏には集中出来なかったんだ。
「奏」
ハッと名前を呼ばれて目の前のユイに視線を戻す。
「どうしたの」
「どうしたって?」
「ずっとボーッとしてた」
「・・・そうか?音楽に浸ってたんだよ」
俺は話を誤魔化した。
ユイは暫く俺を見てたけど、すぐに「馬鹿じゃないの」と笑った。
何も聞けなかった。