傘恋愛 -カ サ レ ン ア イ-
「奏汰、じゃあ俺打ち上げ顔出して帰るから、店閉めといて」
「あ、はい、お疲れ様です」
マスターから店の鍵を受け取ると、マスターは俺とユイを見て「おやすみ」と言って店を出た。
「奏、ホットミルク」
マスターを見送って、椅子に座るなりユイがそう言う。
俺は苦笑しながら「はいはい」と言ってカウンターに入ってミルクを温める。
「たまには他のも飲めば?飽きるだろ」
そう言いながら出来たてのホットミルクを差し出す。
「良いの」
「あっそう?」
ムスっとホットミルクを口にするユイに、俺はまた苦笑した。
「ねぇ」
「ん?」
呼ばれてくるりと振り返ると、ユイが真っ直ぐ俺の目を見ていた。
あの日と、同じ瞳だった。
「何で、あたしのこと何も聞かないの?」
声色一つ変えず、ユイは俺を見たまま、そう言った。