傘恋愛 -カ サ レ ン ア イ-





「奏汰、じゃあ俺打ち上げ顔出して帰るから、店閉めといて」


「あ、はい、お疲れ様です」


マスターから店の鍵を受け取ると、マスターは俺とユイを見て「おやすみ」と言って店を出た。




「奏、ホットミルク」


マスターを見送って、椅子に座るなりユイがそう言う。

俺は苦笑しながら「はいはい」と言ってカウンターに入ってミルクを温める。



「たまには他のも飲めば?飽きるだろ」


そう言いながら出来たてのホットミルクを差し出す。


「良いの」

「あっそう?」


ムスっとホットミルクを口にするユイに、俺はまた苦笑した。








「ねぇ」


「ん?」



呼ばれてくるりと振り返ると、ユイが真っ直ぐ俺の目を見ていた。




あの日と、同じ瞳だった。






「何で、あたしのこと何も聞かないの?」



声色一つ変えず、ユイは俺を見たまま、そう言った。






< 74 / 133 >

この作品をシェア

pagetop