傘恋愛 -カ サ レ ン ア イ-
「帰るか?」
「・・・うん」
ユイが店を出たのを確認して、店の電気を消して俺も外に出る。
「寒くないか?」
「ちょっとだけ」
手を摩り合わせながら白い息を吐いたユイに、鞄からマフラーを出して首に巻いてやる。
なんとなく、寒がりなユイが想像出来たから、普段は使わないけど念の為に出しておいたんだ。
「ありがと」
そう呟いて俺を見上げたユイの頭を、軽く撫でて「どーいたしまして」と言う。
もう、冬になるのか。
ハーッと白い息を空に吐き出してから、ユイの手を握ってゆっくり歩き出した。
「奏、手」
「なに」
「手繋ぐの」
直球で聞いて来るユイに何だか呆れるけど、俺はユイを見て続けた。
「いや?」
「ううん」
そう言ってギュッと握り返して来たユイに、小さく笑い返した。