傘恋愛 -カ サ レ ン ア イ-






ガチャンー


そっと玄関の扉を開けて、念の為あの人の靴が無いのを確認して家に入る。

雨も止みかけてたから、きっと帰って来ない。




入ってすぐの所に位置するあたしの部屋。


豆電球と布団だけの殺風景な部屋の隅に、雫が付いたままの赤い傘を立てる。


やっぱり、店に居れば良かったかな。




何だかそわそわして、きちんと畳まれたマフラーに手を伸ばす。




ガチャンッ


「・・・!」

伸ばした手がピタリと止まる。






帰って来た。




何で。




「おい、居るのか」

「!」



カチャー



入って来ないで、そう言いたいのに、動けない。




「へえ、最近は雨の日になると逃げるように出掛けてくってのに・・・な」


「・・・な・・・いで、」






いやだ







< 86 / 133 >

この作品をシェア

pagetop