傘恋愛 -カ サ レ ン ア イ-
ガチャンー
そっと玄関の扉を開けて、念の為あの人の靴が無いのを確認して家に入る。
雨も止みかけてたから、きっと帰って来ない。
入ってすぐの所に位置するあたしの部屋。
豆電球と布団だけの殺風景な部屋の隅に、雫が付いたままの赤い傘を立てる。
やっぱり、店に居れば良かったかな。
何だかそわそわして、きちんと畳まれたマフラーに手を伸ばす。
ガチャンッ
「・・・!」
伸ばした手がピタリと止まる。
帰って来た。
何で。
「おい、居るのか」
「!」
カチャー
入って来ないで、そう言いたいのに、動けない。
「へえ、最近は雨の日になると逃げるように出掛けてくってのに・・・な」
「・・・な・・・いで、」
いやだ