傘恋愛 -カ サ レ ン ア イ-
「はあっ、あの!あの、すいません!このぐらいの背の女の子知りませんか、緑色の瞳で・・・栗色の髪の毛の!」
「ああ、見た事は在るけれど・・・」
「その子の家!分かりませんか!」
賢治にその「ユイ」の住所でも聞いて置けば良かった。
たとえ別人だと、信じていても。
「あの、すいません!」
俺の中では「ユイ」は、たった一人しか居ないのだから。
「ああ、赤い傘のお嬢ちゃん?そこのアパートに入ってくの見たことあるねぇ」
「本当ですか、有難うございます!」
「あ、でもお兄さん、あまり近付かない方が良いわよ」
「え?・・・」
「最近あの家、物音と叫び声が激しいらしいのよ。前にも時々あったんだけどね、雨の日になると、ほら、在るじゃないそう云うの」
サーッと血の気が引いてくのが自分でも分かった。
「お兄さん、大丈夫?」
「・・・・ユイっ」
「え?ちょっと!」
何でもっと早く、早く気付いてやれなかったんだ。
最初あの痣に気付いた時点で、
あの日ユイが公園で倒れていた時点で、無理矢理でも話を聞いてれば良かったんだ。