傘恋愛 -カ サ レ ン ア イ-
「え?合い鍵?でもあの部屋は、」
「良いから早く!!」
全身の血が上って居ただろう。
怒鳴られた老人は少し驚いてから、慌てた様に合い鍵の束を持って出て来た。
早く、早く。
「物音が凄いのは、この家だよ」
大家が鍵を開けた瞬間、扉をガッと掴んで開けて中に入る。
この家にユイが居るとは限らないのに。
何かが俺をそうさせた。
「ユイ!居るか!ユイ!」
そう叫ぶと、入ってすぐの部屋の中から、ガタッと物音がした。
俺は靴を脱いで部屋に上がった。
「ユイ・・・?」
カチャーと、そっと扉を開けて中を覗く。
「ーーッ!」
「ユイ!」
手足を縛られてもがくユイの姿がそこにはあった。
慌てて全ての紐を解きにかかると、ユイは頑なに首を横に振っていた。
俺を拒むかの様に。