キス、しちまいました
「んー…あずきバーにしようか…迷い中。」
「由生それ好きだね。篤(アツシ)は?」

俺への質問を切り替えて、俺の向かいにいる篤にも問う春。

「ん、俺か」

訊かれてボーッと、腕を広げて両手をアイスの棚に置き、下(アイス)を覗きこんでいた篤が反応する。

「あー、今決めてるとこ」

いつもは俊敏な篤だが、朝は弱いらしく判断が鈍いらしい。

呆れたように春は肩を竦め、
「由生も篤も優柔不断すぎ。僕、先レジ並んでるから」

スタスタとレジへ行ってしまった。

その後ろ姿を見送り、コンビニの出入口へと視線をスライドさせる。

それとほぼ同時に、ウィーンという緩慢な動きで自動ドアが開く。

…あの子だ。

篤にバレないように顔をアイスコーナーへ向けながら目だけを動かす。
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