キス、しちまいました
走ってコンビニの入り口を目指す少年。

小さな風が舞って私の前髪が少し揺れた。

追わずにその後ろ姿を目で見送る。
というか、体が動かなかった。

置き去りにされた二人のお友達さんも呆けていた。

コンビニから飛び出て駆け出す少年。

時を翔ける少年ならぬ、道路を翔ける少年。
凄くどこにでもいそう。

少年の背中を目で追っていたら、少年のポケットらへんから銀色の何かが落ちるのが見えた。

少年は気づいていないらしく、そのまま走りつづけて小さくなっていく。


残された私。

店内にいる店員さんとおじさん、あの少年の友達二人の不躾な視線が私に注がれる。
私はというと、

「………」

まだ呆けていた。

頭は多少動いているんだけど、体が状況についていかない。
逆かな?
精神と肉体と心はそれぞれ違う、これは美ぃちゃんの言葉だっけ。

―じゃなくて!!!!!!!!

そう強く思うと、体の強ばりが解けて酸素が脳に行き渡る。


普段よりも落ち着いて現状を把握する自分がいた。

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