キス、しちまいました
「何、まだヘタレてんのお前。」

声のした方を見上げればタオルを首に巻いた篤。

「篤っ!もうホントこいつウザイんだけど。どうにかして」

「よー篤。どつかれっ!」

「…何だ、それ」

「試合から戻ってきて篤おつかれと、今俺がどつかれているのをかけてみた」

「…。確かに、ウザイな」


汗を拭きながら目の前に篤が座る。

「いつもは余裕気取ってる佐倉がここまで追い詰められているのは、非常事態かもな」

嗚呼…
あの頃に戻りたいナリ。
はじめてーのーちゅうー。

…あああ。

またもや思い出して頭を抱え込む。

「タイムマシーンが欲しい」

「「ねーよ」」

ですよねー。

「佐倉。お前は…、どうしたいんだ?」

「……。」
どうって、なぁ。

「少なくとも、仲良くなりたい」

叶うなら、あの子にとって特別だと思われる存在になりたい。

…うん、
よし。

「謝って、その後まず名前を訊く。そこから進んでみる」

進まなきゃ、何も変わらねぇ。

それを聞いて篤は満足気に笑った。
「まぁ、精々頑張れ」
「精々痴漢扱いされて仲良くなる前に玉砕して砂になり土に還って新しい花でも咲かせてれば?ガンバッテ」

相当俺に苛ついたのか、毒舌全開な上に棒読みで励ましのお言葉をくださる春くんです。

「いや、悪いのは俺だけどもそれ本当洒落にならないから止めて春。」

「はっ。立ち直るのが遅いんだよ」

「そうだぞ止めておけ坂本。土に還ってもアイツは花どころか芽をだすことすら出来ないんだから…」

「篤やめてホント止めて」

何だかんだ、励ましてくれる(多分。ポジティブに行こうぜ)親友達。


まぁ、名前を知る前に。

俺の名前も知ってもらいたい、な。



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