蜂蜜れもん
Episode2

体のあらゆる所が痛いのと蒸し暑いので目を覚ますとそこは自分の部屋だった。「何で」とも思ったが自分の身に何があったかすぐに思い出して面倒な考え事を止める。
ベッドの上から部屋をぐるりと見渡して、机に置いてある時計を見ると日付が変わっているのに気が付いて驚く。
コンコンと部屋をノックする音が聞こえたので寝起きの掠れた声で返事をする莉緒。ガチャっとドアノブを回して入って来たのは兄だった。

「気分はどう? 目ぇ覚まさないから心配だった」
「おはよ。この痛みと暑ささえなければ気分は最高だよ兄様」
「兄様とか気持ち悪いから止めろ。学校は休む?」

その兄の言葉に莉緒はニタァと口元を釣り上げて笑うと「行くよ」とだけ言う。
その表情からして「休む」と返ってくると予想していた兄は少しだけ驚いた表情をした。それから気付かれないように溜息を吐いて「了解」とだけ答えて1階へと下りて行った。
ベッドから下りようとすると兄が戻って来て最後に一言。

「あと10分で支度しないと遅刻だぞ」
「うわぁ……」

筋肉痛のように痛む体を無理やり立たせると、いつ脱がされたのか記憶にないハンガーにかかっている制服を着始める。
机に置いてあった携帯を見ると数件メールが届いていたことを知った。それは前の学校の友達から。昨日が初登校だということを覚えていたらしく、心配で夜にメールをくれていたのだ。その友達の優しさに朝から涙が込み上げてくる。そして今日1日頑張れる気がした。
セーラー服の胸ポケットにストンっと携帯を落として、軽い鞄を持って莉緒も1階に下りて行った。
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