蜂蜜れもん

「おはようございます」

印刷機やらなんやらの音で挨拶がかき消される。
数名の先生は存在に気付いているはずなのに話しかけてくれない。心の中で「冷たい……」と項垂れたくなる。
担当の先生の名前さえちゃんと聞いていなかったから呼ぶことも呼んでもらうことさえ出来ない。どうしようどうしようとカウンターでオロオロしていると後ろから話しかけられた。

「えっと、大丈夫?」

ビクっ!!!!――

ポンっと肩に手を置いた人は反応に苦笑いしながら話し始めた。

「2年8組担任の丹野っていいます。転入生の西園莉緒さん、かな?」

心細さMAX+男の人に肩を軽く叩かれたので泣きかけていた。だから首を思い切り上下に振ることしかできなかった。
多分目の前にいる丹野には、迷子になった子犬が主人と再会出来て嬉しい気持ちと怒られるんじゃないかという恐怖でカタカタと震えるようにしか見えていないだろう。

――担任男の人ぉっぉおおお

「先生、保健室どこですか……」
「え、体調悪いの!?」
「心が複雑骨折しそうです」
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