蜂蜜れもん

丹野が莉緒を見る目が冷たかったのは言うまでもない。
保健室に行けず、チャイムが鳴って少し遅れて教室に向かう。
緊張と男子生徒がいると思うと顔が青ざめてくる。フラフラしながらも教室のドア前に来た。

「大丈夫?」

両手で顔を覆うから心配になって覗き込んで問いかける。

「保健室n」
「大丈夫そうだね」
「つら」

莉緒の言葉を容赦なく遮り、心の準備が出来ていないのに容赦なく教室のドアを開けた。
教室から聞こえてくるのは「先生おせーよ」「休み時間潰さないでねー」なんて野次を飛ばす声。

――夏休み明けて1日目なのに元気ですね皆さん……

「こんな時期だけど、このクラスに新しい仲間が加わります」

転入初日にして莉緒の中で担任の丹野は【鬼】でインプットされた。

「男!? 女!?」
「可愛い女の子だよ」

そう先生が言うものだから男子からは「やったー!!」なんて声が聞こえる。何故かハードルを上げられて余計に入りにくくなり、ドアから離れて壁に背中を付けた。
教室に入った途端男子から「ふつー」「どこが」って言われたら。これがきっかけで女子から虐められるのではないか。普段なら絶対に考えないことまで考えてしまい憂鬱になってくる。
教室をチラッと伺えば笑顔で手招きする先生がいた。

「鬼だ……」
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