蜂蜜れもん


   * * *


「部活どうするの?」
「帰宅部かな……入れそうな部活がない!」

美術部に入ろうと思って、お昼のあと少しだけ美術室に寄ってもらった。しかし皆のレベルが高すぎる。色んな生徒が色んな賞を取っているのだ。準備室の方では完成されてない作品が並べられていた。完成していないと分かっているのに世界観があって惹きこまれるイラスト。
休み時間でもたまに運動部の人が裏庭にいるから裏庭にも行ってもらった。それもまたレベルが高くて、運動神経が普通の莉緒が入ったとしてもついていけないだろう。

「「あ゛っ!!」」
「ちょ、おまっ」

男子生徒の“あ゛っ!!”と言う声はハッキリと聞こえていた。でも何に対しての発言かは解らない。上履きで床に着地する音が後ろから聞こえたが振り向こうとしなかった。それは自分には関係ないと思ったから。
途中何を言っているのか分らない。

「にゃ゛っ!!」

次の瞬間、背中に何かがのしかかって床と莉緒が出会う。
ゴッ、という鈍い音と共に……
急いで男子生徒は起き上がるが下敷きになった少女は起き上がらない。

「莉緒!?」

階段上で追いかけっこをして遊んでいた男子生徒2人。捕まりそうになったから階段上から飛び降りたのはいいがタイミング悪く下には女子生徒2人。莉緒と愛海がのんびり歩いていた。2人して言葉のようなものを発したあとに飛び降りた方が退くように言おうとしたが間に合わなかった。
手すりに掴まれず、見事に覆いかぶさってしまって莉緒と床がご対面することに。

「っ、ふぇ……い、た」
「あーぁ、赤くなってらぁ……ちょっと待ってろ」

鈍い音がしたからなんとなく予想は出来ていたが、前髪を上げると額が赤くなっていた。
本人にとって今はもう男子生徒に触れられていようが関係ない。とにかく額が痛いのだ。愛海に起き上がらせてもらって抱き着いてボロボロと泣く。

――そういえば今日の星座占い12位だっけ

「大丈夫かい? ごめんね、アイツ謝らないでどこか行っちゃって」
「保健室行って診てもらう?」
「大丈夫……」
「莉緒、鼻水付けないでね」
「みーちゃん酷い。付けないもん」
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