指先の恋
僕は小説家だ。
小説だけで食べていこうとは考えていないけれど、書きたいから書く。
小説の中の人物の未来を決めることができるのは、この僕だけだ。
ハッピーエンドも、バッドエンドも。
すべては僕次第。
今は雅という主人公と、その担任との恋を書いている。
だけどそれがどうしたことか、雅は実体化して現れてしまったのだ。
きっと僕は疲れていて、現実と幻想の区別がつかなくなっているのかもしれない。
それでも雅はいつも僕の隣にいるのだから、この際幻想だって構わない。
「さっさとハッピーエンドにしなさいよ」
ただやはり性格に、問題があるのだが……。