指先の恋
再びカタカタとキーを打つ。
コーヒーに手を伸ばし、マグカップを傾けた。
口の中に苦味が広がって、頭が冴える。
あと少しで区切りのいいところだと思っていると、再び彼女が画面を覗き込んだ。
「ねぇちょっと、暗い過去とかマジいらないから」
「ちょっと黙ってて」
バックスペースキーに手を伸ばす彼女に、すかさず僕も言い返す。
この影のある設定は、最初から考えていたのだから。
カタカタと指を動かしていると、白い手が僕の動きを止めた。
「ケンタはさ、恋愛小説で何を伝えたいの?」