指先の恋
「早く書いてしまわないといけないんだ。だから邪魔しないでくれ」
雅の頭をぽんぽんと叩く。
艶やかな黒髪は、ふわりとした感触。
触れられるということは、幽霊ではないのだろうか。
まぁそんなこと、僕にはどうでもいいのだが。
「そもそもさぁ、私の存在に驚きなさいよ」
僕の顔に彼女が近づき、額と額がゴツンと音を立てた。
「自分の書いてる小説の主人公が現実に現れるなんて、ありえないでしょ!?」
彼女はさらにまくし立てる。
すごい剣幕だ。