エデン
おれは重い足を引きずりながら、ヒカルの待つ家へと帰った。
ここにももういられないな‥‥
恐らくおれがここにいる事はばれてる。
ごめんなヒカル‥
辛い思いさせて‥‥
そっとヒカルの頬に触れた。
暖かい‥‥優しい感触をおれは忘れない。
「‥‥タケル、ちゃん?」
ピクリと身体が揺れ、ヒカルは瞳を開けた。
起こしちまったかな?
「タケルちゃん!?」
ヒカルはおれをみると驚いたように身体を起こした。
昨日よりぼろぼろなおれをみて驚いたんだろう。
だけどおれはそれに気付かないふりをして、俯くようにヒカルから視線を反らして絶対言いたくなかった台詞を吐いた。
「‥‥ヒカル、伯母さんの所に行け」
「‥‥え?」
こうするしかないんだ。
おれに、ヒカルを護る事はもう出来ない。
「ど‥して?」
震えるヒカルの声が聞こえた。
「あたしが酷い事言ったから?あたしの事嫌いになったの?」
お前を嫌いになんてなるわけない。
お前が本気であんな事言ったなんて思ってない。
「ごめんなさい‥ごめ‥‥なさ‥」
聞こえるのは嗚咽のようなヒカルの声。
「‥から。あたしも一緒に盗むから!‥嫌いにならないで!!タケルちゃんと一緒にいたいの!!」
ハッとなって顔を上げる。
見えたのはぐしゃぐしゃに歪んだヒカルの顔。
おれはヒカルを抱きしめていた。