エデン

シャワーを浴びて戻ると、女が丁度目覚めたらしくボーッとした瞳で俺を見てる。

「‥‥カイ?」 

俺はタオルで頭を拭きながら女に近づき、ベッドに腰をかけて軽くキスをした。

「おはよ」

「ちゃんと乾かさないと風邪ひくわよ」

女は濡れた俺の髪を弄りながら、縋るように俺の腰に手を回す。



ああ‥‥うざったい。

むせるような香水の匂いもに吐き気がする。



「‥‥カイ、愛してるわ」

言いながら女は強請るように俺に唇を寄せる。



‥‥やめろ。

俺が聞きたいのはお前の声じゃない。



俺はそれを塞ぐように舌をねじ込み、吐息ごと奪った。

「‥‥っん‥」

女は苦しそうに息を零すが、俺は更に荒々しく貪った。

そんな声さえ聞きたくない。

唇を離すと、女は充血した唇を半開きなままトロンとした瞳をしてる。

俺は女の唇を親指の腹でなぞり自虐的な笑みを浮かべた。

女は再び強請るように俺の首に腕を回してくる。

俺はやれやれと思いながら窓の外をみた。

いつの間にか明るくなっている。

‥‥今日はいい天気になりそうだ。

「‥‥あ」

「どうしたの?カイ?」

何もしない俺に焦れたのか、女が甘ったるい声をだしながら俺の頬に触れた。

「帰る」

「え!?」

俺はベッドの下に脱ぎ散らかしてあるTシャツを着て、サイドボードに置いたロケットを首から下げた。

「いきなりどうしたのよ!?」

女は焦ったのか俺の腕に縋りついてきた。

「久しぶりに従兄妹に会いたくてね」

言いながらやんわりと女の手を外した。

女の縋るような瞳はあえて無視しよう。

「じゃ」

その変わり作った笑顔を女に向けた。

「従兄妹と私どっちが大事なのよ!?」

再び女は俺の腕に縋る。

ったく、めんどくさいな。

「従兄妹」

俺はにっこり笑って言うと、今度は強めに女の手を振り払った。

俺の一言に今度は固まったように動かない。

‥‥今の内に出てこ。






「カイの馬鹿────っ!!」



外に出てすぐに女の金きり声が聞こえた。










< 136 / 148 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop