エデン
俺は家を出ると、小走りになった。
さっき女に言った、従兄妹に会いたくなったと言うのはホントだ。
まぁ、たまたま窓の外を見た時にその従兄妹の姿を見つけたからなんだけど。
隣に住んでるのにここ暫く会って無かったし、アイツん家は少し問題あるからちょっと気になっていた。
俺が言うのもなんだけど、どうしようもない親父さんだからな‥‥
飲んだくれで暴力も酷い。
何度かあいつらを家に匿った事もある。
おばさんは凄く優しい人なんだけど、何せ身体が弱く殆んど家にいない。
だからアイツは必死にいつも弟を護ってる。
女なのに凄いよ。
親父さんと殴り合いのケンカをしてるのもしょっちゅうだ。
小さい頃から生傷も絶えなかった。
だけどアイツが泣き事を言ったのはたったの一度もない。
なんとゆーか、男前な奴だ。
‥‥見た目も男みたいだけど。
女に告白された事も何度かあったし。
その度に俺は可笑しくて堪らなかったのだが、以外と真面目なアイツは真剣に困ってたっけ。
でも毎回、相手を傷つけないようにしながら丁寧に断ってた。
自分は女だと話して、気持ち悪いとか、結構辛辣な事を言われた事もある。
なのにアイツは苦笑いするだけで、言い返した事がない。
女相手に喧嘩は出来ないんだとさ。
お前は男かっつーの。
逆に俺が切れそうになった事もある。
アイツは手先も器用だし運動神経もいい。
なんでもそつなくこなす。
でも気持ち的にもの凄く不器用なとこがあってたまに見てて歯がゆくなる。
まぁそれがアイツのいいとこでもあるんだけどな。
「サクヤ!ユウキ!!」
俺は前を歩く二人の名を呼んだ。