エデン

「サクヤ!ユウキ!!」

呼ばれて後ろを振り向くと、例の従兄妹がこちらに向かって駆けている。

「おばさんとこに行くのか?」

近づくとプーンと女物の香水が薫った。

‥‥ったく。

ホント、こいつは何やってんだか。

「近づくな。臭ぇよ」

だからあたしは拒絶の言葉を発した。

カイは足を止めて自分の身体の匂いを嗅いで苦笑いをしている。

‥‥いつもこうだ。

しばらく家に帰って来ないと思ったら、毎回違う女の家に泊ってる。

背が高くて外見もいいもんだから、馬鹿な女は直ぐに騙される。

カイが本気になる事なんてないのに‥‥

「‥‥レイナが配してる」

「姉さん元気だった?」

能天気に聞いて来るカイに腹が立つ。

カイはもともとシスコンだ。

レイナが結婚した時だって相当反対していた。

‥‥ほんと、こいつを説得するの相当骨が折れたんだぞ。

なぜか殴られたしな。

まぁその甲斐もあってか、結婚式の時にはちゃんと祝福してたけど。

なのに最近はレイナに心配かけてばかりだ。

こんなのカイらしくない。

それに‥‥

「お前がどんな女の家に泊ろうと勝手だけど、そのロケットだけは置いてけ!」

あたしはカイの質問には答えず、カイが首から下げているロケットに目をやり、カイを睨みつけた。

「‥‥そんなんじゃセラが可哀いそ過ぎる」

カイの表情が一瞬変わった。

ほらな、結局こいつは何一つ変わってないんだ。

こいつの中からセラが消える事はない。

カイは俯いてロケットを握りしめている。

‥‥カイ、いい加減わかれよ。

お前が何したって、何も変わんねーんだよ。

「ユウキ、行くよ」

「え!?」

あたしはユウキの手を引いてカイの横を通り過ぎた。




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