エデン
「やっぱりアンタか」
台所に行くと酔っぱらった親父が椅子に躓いて倒れていた。
倒れてなお酒瓶は落とさず、手にしっかり握りしめている。
「何しに来たんだよ」
‥‥こいつが帰って来た理由なんて分かってる。
どうせ酒を買う金がなくなったんだろう。
呆れて物もいえない。
こんな奴が自分の父親だと思うと情けなくなる。
第一家にそんな金あるか。
散々家の金使いやがって。
こっちは母さんの入院費だけで手一杯だ。
「っとに情けねぇ!」
あたしは吐き捨てるように言って、机をドン!と殴りつけた。
「あんだぁ!その態度は!?」
親父は呂律の回らない口調で机に寄りかかりながら立ち上がるとあたしの胸倉を掴んで投げ飛ばした。
「ってぇ‥」
立ち上がると、今度は顔を殴られた。
二発、三発と殴られ唇が切れ、あたしは手の甲で流れる血を拭いながら親父を睨みつけた。
────きっと、後悔はしない。
親父はあたしの態度が気に入らなかったのか、持っていた酒瓶をあたしに向かって投げつけた。
けれどそれはあたしにあたる事はなく、あたしの頬すれすれを通り壁に当たって音を立てて砕けた‥‥
ガシャーン‥‥!!
『お姉ちゃん痛いよぉ!!』
一瞬、動けなくなる。
頭の中で何かか壊れた気がした────‥‥