エデン
ルカが父さんが僕を探していると言ってたけど、父さんは何かを言いたそうにしているものの、どうも口を濁している。
だけど僕が家に帰ってからずっとそわそわしっぱなしだ。
「‥‥何かあったの?」
そっとしとこうかとも思ったけど、夕飯の時に聞いてみた。
「いや‥‥」
やっぱり父さんは何か言いたげな瞳を向けるものの、言葉を濁す。
「あのな‥‥」
「うん」
「だから、な」
‥‥父さんの顔がどんどん赤くなってくのは気の所為かな?
思い切ったように父さんは僕の顔を見ると、箸をテーブルの上に置いた。
「‥‥結婚、しようと思うんだ!」
思いがけない父さんの台詞に僕は箸を置いて、一瞬固まってしまった。
結婚‥‥
そうだよね‥
母さんが死んで、もう7年もたつんだ。
父さんにだって幸せになる権利はある。
でもどこか穴がぽっかり開いてしまったように、寂しく思う自分がいる。
だけどそんなのは僕の我儘だ。
「そっか。父さんおめでとう」
だから僕は精一杯の笑顔を父さんに向けた。
今までどこか強張っていた父さんはほっとしたように、破顔した。
「で、相手は?僕の知ってる人?」
「‥‥ヒビキ君のお母さんだ」
「‥‥‥‥え?」