極上!ブラックコーヒー
ダメだ……今回ばっかりは暫く立ち直れないかも。
いや、立ち直れる自信がない。
私、美空夏木、(みそらなつき・17歳・高2)の家の隣にはカフェ『シーズン』がある。
ここには8歳年上の春兄こと風見春人(かざみはると)と同じ歳の秋人(あきと)と冬人(ふゆと)の双子がいる。
いわゆる、私たち4人は幼なじみってヤツだ。
「こうなったら!!!」
ガコン、ガコン……
近くの自販機でブラックコーヒーを買いまくってやる。(←飲めないくせにやけくそになった)
両手に持つのがやっとの缶コーヒーたち。
ちょっとバランスを崩すと……全部落ちるな、こりゃ。
冷えきった缶が腕の感覚を奪っていく。
この状態から一秒でも早く脱却するため、缶が落ちないギリギリの体制で家に向かった。
誰か家の前にいる?
あれは──
秋人と女の人……(誰だろ?)
私は咄嗟に電信柱の影に隠れた。
ってなんで私が隠れなきゃなんないのよ!
と思いつつも、反射的に身体が……
腕は缶コーヒーの冷たさせいで完全に感覚がなくなっている。
落ちるのももはや時間の問題。
「ええいっ!!」
私は目を合わせないようにして玄関目指して一目散に駆け出した。