極上!ブラックコーヒー
チリン……
さてここは、
閉店間際のカフェ『シーズン』でございます。
「あれ?春兄は?」
「俺で悪かったな」
「別にそういうわけじゃないんだけどね」
「いつものやつでいいんだろ」
「……うん」
秋人が作ってくれるんだ……
って!!!
過去にもこんなことあったけど、
嫌な思い出しかない……
不安だ……不安すぎる!!
確か私の覚えている限りだと砂糖の代わりに塩が入ってたり……またある時はミルクの代わりにホワイトソース入ってたこともあったな……
(みんな秋人の悪ふざけ)
そ──いや、まともなやつなんて飲んだことないかも……
「ほら、出来たぜ」
ゴクリ……
果たしてこれは信用していいのだろうか……?
逃げるわけにも行かず、「なるようになれ!」と半ばやけくそになりつつも、恐る恐るストローに口を近づけた。
「あれ?」
春兄と同じ味がする……
「何、びっくりしてるんだよ」
「だ、だって……まとも過ぎて逆に拍子抜けというか……」
この慣れない優しさに逆に悪意を感じてしまう。
「まぁ、今までの俺のお前に対する行動が反発をかうことばかりだったからな」
どうしたの?
いつもの秋人らしくないよ……
『夏木のばーか!!』
って言ってよ。
そ─じゃないと私……
「……夏木が春兄のこと好きってのは分かっていたから、俺は諦めようって思っていたんだ」
「あ……秋人……?」
グラスの氷が溶けてカタッと音を立てた。
「俺はずっとお前のことが好きだったんだ」