君がくれたもの
「最近付き合い悪いからさ。」

「こっちは忙しいの。」

店員に頼んだオレンジジュースが届くなり、
すぐさまストローに口を付けて飲む。

「彼」は甘いものが嫌いらしい。

昔自分が好きだったオレンジジュースを渡すと

「嫌いだからいらない。」

と突き返された事がある。

過去の苦い記憶を思いだし自分で嫌になってきた。

甘いジュースも苦く感じる。

「ふーん。ならいいけどさ。」

笑って見せるが目は笑ってない。

その事は祐二本人も気づいてるらしい。

「そういう事。」

(だから私の事は相手にしないでよ。)

言えるはずのない言葉を呟いてみせる。

昔から苦手だからだ。

祐二は菜子が「彼」に想いを寄せてるのを知っている。

菜子は顔に出やすいタイプだから。

だが、祐二はその事を菜子や「彼」にも言っていない。

きっと面白がっている。

フラれるのを見て笑いたいんだ。

(最悪。)

菜子は再び飲みかけのジュースを口にして「彼」を探す。

祐二は(やっぱりか。)と思った。

< 10 / 87 >

この作品をシェア

pagetop