君がくれたもの
(好きなんだ……。)

この状況に幻滅した。

目の前にいる好きな女は自分を見てくれてない。

「彼」の事を探してばかり。

(嫌になるな。)

顔をそらすと高校生らしい女のグループが見てくる。

祐二の事が気になるらしい。

「あの人かっこよくない?」

「前にいる人彼女かな?」

嫌でも聞こえてくる会話に菜子はウンザリとする。

(だから付き合ってないってば。)

「ああゆうのウザい。」

「本当は嬉しいくせに。」

「嬉しくなんかないよ。」

嫌味を言ったはずなのに菜子は返せなかった。

祐二は学校でもモテる。

不特定多数の女子に。

(ほんと、ウザい。あんな女達に見られるのは嫌だ。)

自分の事を顔だけで好きになられるのはごめんだ。

祐二はわざと視線を菜子の方に向ける。

ちらっと見る。ほんの数秒。

そしてまた視線をそらす。
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