君がくれたもの
美香はチョップをする真似をしながらおどけてみせる。

「……馬鹿らし。」

「りっーちゃん。
お父さんはお前をそんな子に育てた覚えはないよー。」

いつもの光景。

いつもの会話。

今日はこんな事ですらも愛おしく感じる。

(やっぱり、みんなの事好きだな。)

ヘラヘラと笑いながら確認した。

三人の歩く音はやっぱり合わない。

まるで、一人一人が違う道を歩いてるかのように。

離れ離れになりそうで。

「二人とも歩くの早いよ。待ってってば!!」

「うっせえ。
自分が悪いんだろが。」

「美香早く来いよー。
置いてきぼりになるぞ。」

「置いてきぼり嫌ー。
もう意地悪しないで。」

置いてかれないように走り出す。

あの日みたいに。

あの日みたいにならないように。

頭の中にフラッシュバックされる光景。

あれは誰?私?違う、あの人?

頭に痛みがまたスッと走る。

痛い。

痛い。

頭?胸?ううん、心。

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