君がくれたもの
何も言わずただ、見てくる律に。

大人の「男の人」になった律の表情に。

とくん。と胸が高鳴る。

強く響く音。

とっさに早口になってしまった。

「……私、いつも迷惑かけてごめんね。」

(ごめんなさい。)

「つまらない意地張って迷惑かけて、ごめん。」

(それと、)

「後、みんなの前ではこんな馬鹿みたいな格好なん
てしないし、不機嫌にならないから。」

心に浮かぶ言葉と、口にでる言葉は同じようで。

それには差なんてなくて。

「そんな事言うために来たのか?」

律は、あきらかムスッとしていた。

「……だって!!」

(だって、私は……)

「今日は宿題仕上げに来たんだよ。
だから余計な事言うな。何か調子狂うし。」

「…………」

「お前が気にする事じゃねえだろ。それに……」

(それに?)

「言わなくてもわかってるから。」

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