君がくれたもの
自分の名前を呼んでくれた事に嬉しくなる。

だけど、逆に苦しい。

この気持ちもわからない。

「もう!!りっちゃんの馬鹿野郎!!」

美香は後ろから律に抱き着く。

(……しないでよ。抱き着かないでよ。)

「どけよ!!暑苦しい!!」

何て言いながらも律は嬉しそうに照れている。

その表情を見たら余計、胸がえぐられた。

(いたい。痛い。やっぱり……)

帰りたい。頭に浮かぶ言葉。

(今帰れば辛くない。でも、)

帰ったら負けた気がする。

美香ではなく自分自身に。

「菜子、気分悪いのか?」

「ううん。大丈夫。」

律が菜子の隣に近づきそっと耳打ちしてくる。

肩がくっつきそうな距離に菜子の顔は真っ赤に。

そして耳元で言った。

「あんま無理すんなよ。」

「う、ん。」

「体調悪かったら言えよな。」

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