君がくれたもの
「律宿題できたんだ。」

「当たり前だよ。」

次は右斜め前から祐二が声かけてきた。

「祐二の答え丸写しだけどな。」

「いつもの事じゃん。」

絶え間無く続く会話をよそに担任が教室に入ってきた。

その瞬間になぜか重たい雰囲気になる。

担任は何も言わず、淡々と言った。

「お前達に伝えなきゃいけない事がある。」

背筋がゾクッと嫌な音を立てる。

言葉を待つように唾を一つ飲み込む。

誰も喋らない教室で声だけが響いく。

「美香……吉野美香だが。転校した。
急に決まったらしい。それだけだ。」

シーンとして、時間が止まった空間のような雰囲気だ。

転校?何で?

「さあ、体育館に行きなさい。」

ぞろぞろと出ていくクラスメート達。

担任も出ていく。

だが、俺だけは一歩も動けずにいた。

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