君がくれたもの
この場を逃げ出したかった。

今すぐ帰りたくなった。

菜子がギュッと手を握ってくる。

強く。きつく。

抵抗しようとすると、思い切り倍の力で握り返す。

俺は諦めてやめた。

聡さんはそのあとも美香の事について話してくれた。

春菜さんは隣で懐かしそうに聞いている。

「律くん達は何で美香の事知ってるの?」

「えっ!?それは……」

本当の事を言うにも言えず黙り込む。

「生徒名簿です。
俺達、先生に生徒名簿の整理頼まれてて。
その名簿に美香さんの名前があったから気になって。」

祐二がなれた感じでごまかす。

二人とも納得したような様子だ。

それを見てホッと胸を撫で下ろした。

「あの、俺達そろそろ帰ります。お邪魔しました。」

「こちらこそ来てくれてありがとう。
また、いつでも来てね。」

笑顔で言ってくれる春菜さん。

その言葉を聞いて胸の奥が温かくなった。
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