君がくれたもの

好きな人

菜子は悩んでいた。

守から来たメール。

内容はみんなと話したいから集まりたい。

近所のファミレスに来てくれと。

男なのに絵文字が多い事は気にしてない。

(りっちゃん……来るのかな。美香と。)

重い足取りでヒールの高い靴を履いて歩く。

長い髪は茶色い染めて。

別に気合いを入れてるわけじゃない。

見てほしいから―――

自分の事を「彼」に見てほしいから。

ファミレスに入ると流行ってる歌手の歌が大音量で流れてる。

慣れない音に耳が嫌になりながらも店内を見渡す。

見た事のある男がこちらに気づき手招きをしてきた。

(祐二……。)

何となく嫌だった。

でも祐二の前の席へと腰掛ける。

「菜子、髪染めた?明るくて良いな。」

爽やかな笑顔にムスッとした。

「別に。」

(何が別になんだろ。)

視線をそらし店内をぐるり、と見る。

その視線は「彼」を探している。

「しかし意外だな。菜子が来るなんて。」

「……どうして。」

言葉を詰まらせながらも落ち着いた表情で。

動揺しないように。

< 9 / 87 >

この作品をシェア

pagetop