恋歌 〜secret love〜
「あともう1つ。進が言うPEACEの特徴にも繋がるかもしれないけど、俺は、曲調にはこだわらないバンドを目指したい」
「曲調にこだわらないって?」
頷くみんなと違って、あたしには勇人の話す内容がさっぱりわからない。
あたし、音楽やりたいなんて言ってる割には、知識なんて昔習ってたピアノの知識レベルだ……。
思わず聞き返したあたしに、勇人はにやりと笑ってから説明を始めた。
「例えばさ、パンクバンドはパンクテイストの曲を演奏するし、ラップを取り入れた音楽をやるバンドの曲にはラップのパートが入ってるだろ?」
「うん」
「普通はそうやって、自分達のスタイルみたいなものを通すバンドが多い。バンドじゃなくても、歌手だってそうだろ?
それは、すごく格好良いことだと思う。自分達の特性を生かして、やりたいことを追求してるってことだからな。
だけど、みんながそれじゃ面白くないだろ?だから、俺達は敢えて、逆をいきたい」
「つまり、特定のスタイルを持たない……ってこと?」
勇人が説明してくれたことをまとめると、そういうことになるはずだ。
「そう。それで、それを可能にするのが……奏、お前だ」
「あ、あたし?」