恋歌 〜secret love〜
「そう。俺達はそれぞれできる楽器を選んでるから、いろいろな曲を弾き分ける自信もある。でも、それができるボーカルとなると……なかなかいないと思う」
勇人は右手を見ながら、握ったり、開いたり、よくわからない動きを繰り返した。
「指や腕の力をコントロールしたり、気持ちを曲に合わせて入れ込むことは、わりとやりやすいことだと思う。
……楽器を弾く行為って、自分で、今何をやってるのかがはっきりとわかるだろ?だから、弾き分けることも練習を重ねれば、できなくはない」
「勇人なんか、特に努力家だしね」
軽く笑いながら言う阪崎くんに、勇人が苦笑いを返す。
「でも、声に関してはそういうわけにはいかないと思う。
例え勉強して、声を出す時の体のメカニズムを知ったとしても、それをコントロールできるようになるわけじゃないだろ?」
勇人は、右手の人差し指をぴん、と真上に立ててあたしを見た。