恋歌 〜secret love〜
『音楽室にでも、場所を移しましょうか?』
授業の後に職員室に行ったあたしに、頼城先生はそう言った。
たぶん、先生なりの気遣いなんだと思う。
職員室には、担任の森田先生もいる。
そんなところで、わざわざ頼城先生に相談なんてできるわけがない。
蒸し暑い校舎の中を歩きながら
あたしはただ、真っ黒な先生の背中だけを見つめた。
「暑いから、冷房つけましょうか。
最初は少し強めでも構いませんよね?」
音楽室の扉を開けた頼城先生が、そう言ってあたしを振り返った。
「そうですね。……って、どうして今は敬語なんです?」
「奏も言うようになったな……。
たまたまだよ。面倒だから、もう元に戻すぞ」
冷房のスイッチに触れながら、先生がちょっと面倒臭そうに答える。