恋歌 〜secret love〜
「それで、相談って?」



冷房をつけると、先生は何気なくピアノの椅子に座った。



黒い上下のスーツとグランドピアノの黒が

今からコンサートでも始りそうな、そんな格好良いイメージを持たせてくれる。



「大学の、ことなんです……」



あたしは、一番ピアノに近い机に体をもたれ掛けさせて、両手を置いた。



「あたし、教育学部に行くことは決めてるんです。

でも、どこの大学に行けば良いのか迷っちゃって。模試なんかで、志望校を書く時も困るんですよね」


「あぁ……なるほどな」



ためらいがちにゆっくりと言ったあたしを、頼城先生はじっと見ながら言った。



先生は、人の話を聞く時はいつも、相手の目をじっと見つめる。


少し下から見上げられた時なんかは

どうしようもなくドキドキして、心臓が壊れちゃう気もするくらい。



他の子にもこんな風に接してるんだって思うと、良い気分はしないんだけど……。


「それは、奏次第なんじゃないか?」
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