恋歌 〜secret love〜

「奏、全然問題なさそうじゃない」



演奏が始まったステージを眺めながら、桐渓さんが言った。



高めの可愛らしい声の挨拶からは想像しがたい、少しハードなアップテンポの曲が流れる。


その瞬間、ステージに立ってから少しずつ解れてきていた奏の表情が、曲に染まった。



今日披露する歌の中で、俺が聴いてないのは最後の１曲だけ。


それ以外は、仕事の合間に少しずつ聴かせてもらっていた。



「音程が取りづらいからラップみたいなのは苦手」

そう渋っていた奏だけど、今はそんな部分も堂々と歌ってる。



何よりも、ステージ全体が楽しそうに見えた。



勇人達だって、普段の部活の演奏とは表情が全然違う。



同じ音楽でも、聴かせ方や見せ方でこんなにも変わってるんだな……―――