恋歌 〜secret love〜




「次が、最後の歌です」



奏の声が、静かになった体育館に響いた。


時間が経つのは早い。


そう感じたのは久しぶりだった。



「先生、この歌を聴くのは初めてですよね?」


「初めて、ですが……?」



いきなり口を開いた桐渓さんに、少し驚きながらも返事をした。



「この歌、奏が作ったもので……。

少し前に歌った友達を思う歌よりも……ずっとずっと強い気持ちが込められてると思うんです」



まっすぐ奏を見つめながら話す桐渓さんに、思わず視線を送った。


桐渓さんもこっちを見る。



「大切に、聴いてあげて下さい」


「わかりました。……もちろんですよ」



真剣な言葉にしっかりと頷いて、俺は視線をステージに戻した。




「聴いて下さい……」



気のせい、か……?



そう言った奏と、目が合った気がした。



そのまま吸い込まれるように、奏の瞳を見つめる。



「……恋歌[れんか]」
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