恋歌 〜secret love〜
「2、3日前だったかな?
隆夢ちゃんがさ、『恋歌』の歌詞が欲しいって言ってたんだよ」
「それって、文化祭の?」
「あぁ。まぁ、文化祭からはだいぶ時間が経ってるけど、CDはこの前できたばっかだし……。
それ聴いてたら欲しくなったんじゃないか?
何か紙にでも書いて渡してやれよ」
そう軽く言うと、勇人がまた静かになる。
「勇人!何でそんな大事なことを伝え忘れてるのよ!」
隣にいた彩乃が、何も言わないあたしの代わりに声を出した。
「仕方がないだろ!その時は必死だったんだよ!
ライブ録音するのに使った機械返してもらって、英語も質問して、……。
ちゃんと伝えたんだから許せって!」
「ライブを録音してCDにしてくれたことも、勉強を頑張ってるのも認めるけど……
それとこれとは別よ!」
「っ……だいたい!何で奏じゃなくてお前が怒ってるんだよ!?」
「あーもうっ! 2人の仲が良いのはよーくわかったから!
もう少し静かにして?危ないよ!」
無理矢理2人の会話を止めて、まっすぐに自転車を進めた。
……――――
みんなと別れて1人になった帰り道。
何で先生は、あの歌詞が欲しいんだろう……
あたしの頭の中は、そのことでいっぱいだった。