恋歌 〜secret love〜
「足りないとも、十分だとも言えないな。問題と受験者層と、運次第だ」
『隆夢ちゃんには、慰めるとか、励ますとかって能力が備わってないんだな』
呆れたように言い放つ勇人に、少し腹が立つ。
変に励ましたって、何にも良いことなんてないだろうが。
「今まで頑張ってたのに、何でそんなこと言いだすんだ? 何かあったか?」
俺の質問にしばらく黙っていた勇人だが、小さな声が聞こえてきた。
『志望校がさ、彩乃と同じなんだよ』
「あぁ……そういえばそうだったな」
『はっ!?何で知ってるんだよ? 彩乃から聞いてたのか?』
「……阿呆か。副担任だから知ってて当たり前だ」
勇人は、文字では表せない、不思議な声を出して止まった。
桐渓さんの偏差値は、勇人より高い。
さすがに、結果を見せ合うようなことはしてないだろう。
でも、いつも一緒に勉強してれば気付いてもおかしくない……
『じゃあ、成績とか判定も知ってるよな……』
「まぁ、それなりには」
『……彩乃が受かって、俺だけ落ちたら、どうなると思う?』