恋歌 〜secret love〜
低く、ゆっくりと響いた声に、俺はすっと口を開いた。
「いや、全くない。できれば一生、顔も見なくて良いし、見たくないとも思ってる」
『それって、嫌なことに蓋をしてるだけなんじゃ……』
「あぁ……。上手くは説明できるわけじゃないけど、それとは少し違うんだよ」
俺は、カーテンの隙間から夜空を見上げた。
「初めのうちは、……ものすごく腹が立ったし、それだけだった。だから単純に会いたくなかった。
それでも、少しずつ自分の中で起こった出来事を整理して、自分の未熟だった部分を見つけて……。
いろいろとはっきりさせていくうちに、時間もどんどん過ぎていって」
一度、大きくと息を吐いた。
「そうしてるうちに、会って何かしたいって気持ちはなくなってた。冷静に考えて、もうあんな奴等とは友達でもいられないし、いたくないって思ったんだ。
この話については、もう俺の中でちゃんと整理できてるから……今更、恨んでも憎んでもないさ」
『そーゆーもんなの?』
「さぁな。俺の場合はそうだった。
結局俺に必要だったのは、落ち着いて自分や周りを見つめ直すことだったんだろうな。それができてる今は、もう何も未練なんてないさ。
あれはもう……馬鹿だった俺の、馬鹿な過去だ」